7月 21, 2023
仮屋のお寺 源頼光が大江山に住む大蛇を退治に行く途中、若狭に仮の陣屋を設けて3年間滞在した。その地を仮屋村と言う。妊婦が出産のときに一時的に籠ったり、あるいは不浄とされた月経の数日間、籠ったところを仮屋村という。何が本当 […]
6月 27, 2023
熊川から 京は遠ても十八里。小浜でとれた新鮮な鯖は傷まないように、ひと手間かけてから若狭街道を通って京都に運んでいた。 途中必ず通るのが熊川の宿場町で、その熊川が最も発展したのは江戸の初期。魚に限らず米や豆や様々な物資を […]
6月 12, 2023
嫁に来て 我が家はもともと若狭の仮屋村にあった。小浜から10キロほど離れた山村で、てる婆さんは隣村の熊川から嫁にきた。馬に乗って。 婆さんはここで9人の子を設けて、その長男が私の父。しかし当時は満足に育たない子供が多く […]
5月 29, 2023
蛙の子は蛙 三国連太郎は勲章ももらった名優だけどあまりに奔放な人生で、家族にはずいぶん迷惑をかけた。子供の佐藤浩市はそんな親を嫌って長い間、口も聞かなかったそうだけど、気がつけば俳優になっていた。似たような諺があって「こ […]
5月 3, 2023
手術の決意 緑内障シリーズですが、私が受けたのは白内障の手術なので、今回はその体験記です。 白内障は水晶体が濁る病気で、手術以外に治す方法はありません。では、どうなったら手術をするか。手術を行う時期は人それぞれで、細かい […]
4月 9, 2023
人の中心 トカゲは追われると尻尾を切って逃げる。タコはあまり空腹になると自らの足を食べる。もし足一本で満足しない場合、二本目の足を食べて、またその次を食べて、最後にはどこが残るか。話はタコだから謎々のようだけど、これが人 […]
3月 24, 2023
井戸巡り 渋谷から自由が丘に引っ越してきたのは昭和34年。今でこそ若者や外国人に人気の渋谷で、大規模な再開発の途中だが、当時はまだまだ戦後の面影を色濃く残す街であった。 小学校の屋上は焼夷弾が落ちた跡で凸凹。あちこちに空 […]
3月 22, 2023
自分とは仁義 自分探しと言いながら、戦渦のイラクに出かけて殺された青年がいた。おそらく目的を達する前に死んでしまったか、あるいは直前にこれが自分だと思ったかもしれない。近しい人はどんな思いをしたことか。自分探しが流行り始 […]
2月 11, 2023
どちらが先か 鶏が先か、卵が先か。大昔から人々を悩ませてきた問題だが、その判断は見る者の立場によって大きく変わる。哲学者はプラトンもアリストテレスも似たような見解で、それはどちらが先というより、鶏も卵も本質は同じものであ […]
1月 14, 2023
忌中 九品仏の総門をくぐるとすぐ左側に閻魔堂がある。その手前には橋がかかっていて、下を流れるのは三途の川。こちら側が現世で此岸。川を渡ればあの世で彼岸である。そこに焔魔堂があって、中央にはもちろんひときわ大きな閻魔様。左 […]
1月 6, 2023
四季 世田谷の浄土宗浄真寺は通称九品仏。かつて奥沢城だったものが念仏道場に変わって三百余年の歴史をもつ。参道に入ると両脇に松が並び、寺に近づくにつれて欅、いちょうが混ざって、秋になると松の濃い緑もくすんでくる。般舟場とか […]
12月 6, 2022
昆虫採集 「お昼ご飯を食べてから蝉を取りに行きました」こんな日記をつけたのは、夏休みの宿題だったから。取ってきた蝉は草や小枝と一緒に虫かごに入れると、しばらくは弱々しい鳴き声を上げるが、やがて動かなくなって、気がつけば死 […]
11月 27, 2022
出・尾道 義父は皮膚科の医師である。長年尾道で開業医をしていたが、80を越えて今年はやめる、来年はやめると言いながら数年が経ち、5月8日、半世紀の間続けた医院を閉じた。最後の診察日には3人の患者が訪れた。 義父が尾道を出 […]
11月 2, 2022
西のきつね・東のたぬき 関東で「たぬき蕎麦」と言えば、かけ蕎麦に揚げ玉が乗っている。でも、関西では代わりに油揚げがのっている。要するに関西の「たぬき蕎麦」と関東の「きつね蕎麦」は同じもので、油揚げが乗っているのである。ち […]
10月 17, 2022
自由が丘の隙間 自由が丘の駅ができたのは昭和4年。それまでは九品仏駅と呼ばれていて、改札口があったのは今より少し渋谷寄り。自由が丘デパートとひかり街の間であるメインの通りは今のすずかけ通りで、当時駅前の一等地にあったのが […]
10月 7, 2022
一宿一飯 朝夕の涼しさを感じる頃、いつものようにテオ君と近くの公園を一回りしてくると、かすかな茜色の空がきれい。同じ速さで歩くものだから、リードが引かれることもない。ぶらぶら歩いてふと、足元を見ると2人のはずが3人になっ […]
9月 26, 2022
緑内障のイメージ 最近はテレビでも度々放映される緑内障。それは。 早期にはなかなかみつからない。40歳以上の人の5%が緑内障。放っておくと失明する。日本では最大の失明原因。早期発見、早期治療が大事。 だいたい […]
9月 7, 2022
出会い 聞いてはいたけど、ある日、突然にゴールデンレトリバー・ラブラドールの小犬がやってきた。何はともあれ、名前を付けなければならない。以前に飼ったネコはこの作業を怠ったために、一生ネコと呼ばれ、亡くなったときには墓にネ […]
8月 28, 2022
火事と喧嘩は江戸の華。江戸の町には火災に備えて水を溜めた桶があちこちにあった。天水桶と言った。この備えが昭和の時代まで続いて、自由が丘にもコンクリート製の水槽がそこかしこ置いてあった。ついでに各家庭の前には、道路の端にコ […]
8月 16, 2022
限定品の怪 「 季節限定」、「先着十名様限り」 チラシに踊る誘惑の見出しに妻が買ってくるものは、中味がスカスカのカニや一度袖を通したら縫い目のほつれるセーターである。カニの足を切って見れば妻は怒り心頭に発するが、これが反 […]