黒猫のタンゴ
ネコの目
君はかわいい僕の黒ネコ
赤いリボンがよく似合うよ
ネコはなぜ可愛いのか。顔の割に目が大きくて、しかも黒目がちだから、可愛く見えるのです。
これは人間にも当てはまることで、一般的に目の大きい方が可愛い、あるいはイケメンとされる。中でも黒目は大きめがよい。今どきの写真は目が大きく見えるよう、勝手にアプリが修正をしてくれるくらいだから。
写真だけではもの足りなくて、実際、黒目がちになりたければ、虹彩付きソフトコンタクトレンズというものがある。コンタクトレンズの中央が虹彩の色をしているので、黒目が少し大きく見える。
しかし、普通のコンタクトと違って、毎日使っていると角膜障害を起こすことが多いので、使うのならば勝負日だけにしましょう。
だけどときどき爪を出して
僕の心をなやませる
耳は聞くだけ、鼻は嗅ぐだけ。舌も皮膚も同じこと。しかし、目は他の五感とちょっと違います。爪こそ出さないけれど、独特の発信力があって、場合によっては人の心を悩ませるかもしれない。
まず目は動く。大谷選手が打席に立ったときも、天皇陛下の参賀のときも、人々の視線は同じ方向を見る。後ろから声をかけられたときに、咄嗟に振り向いて見れば、誰にでもこちらの意図がわかる。
ネコの瞳
黒ネコのタンゴタンゴ・・・
ネコの目のように気まぐれよ
目の動きほど派手ではないが、目の中では瞳が動きます。
ご承知の通り、瞳は光に反応して暗いところでは大きく、明るいところでは小さく変化をします。
でも、反応するのは光だけではありません。びっくりした時には、交感神経が刺激されて瞳が大きくなる。
生き生きと活動している子は、同じように交感神経が緊張していて、瞳が大きくなる。だからふてくされた子よりも可愛く見える。
赤ちゃんが可愛いのはこの典型ですが、瞳にはこんな発信力がある。ただし、これは若い間だけ。年とともに瞳は小さくなって、この世につぶらな瞳の老人はいない。
20代の頃、直径が4ミリもあった瞳孔が、高齢になると2ミリくらいに縮む。直径が半分になれば、面積は4分の1になって、高齢者は暗いところが苦手になる。
昔、蛍雪時代という雑誌があった。蛍の光や雪の明かりを頼りに勉強をするという、過酷なタイトルで、年寄りには絶対に真似ができないこと。
では、どうしてネコの目が気まぐれなのか。それは、瞳の形がきまぐれだから。大きさも気まぐれだし。
人間の瞳が円形なのに対して、ネコは縦長のスリット状になっています。巾着の円い口をいっぱいに広げるには、多少手間取るけれど、がま口を開けるのは一瞬です。
大きさにも違いがあって、人の瞳は最大限に開いても、面積は黒目のせいぜい半分。ネコの目は9割り方、瞳になる。
ちなみに馬のような草食動物の瞳は横長で、明るい場所で瞳を細めたとしても、広い視野を保つので、天敵をいち早く見つけることができる。
キラキラ光る黒ネコの目
夜はいつもキミのものさ
このようにネコは瞳を最大限に、しかも素早く広げるので、暗闇でも獲物を捉えることができる。それに瞳とはちょっとずれるけれど、ネコの目の網膜にはタぺタㇺといって、金屏風のような膜が備わっています。暗闇でわずかに入ってきた光をタぺタㇺの反射で増幅する。だから、猫が必要とする光の量は人の7分の1程度で済む。
暗闇で猫の目が光るのも、このタぺタㇺの反射のためで、夜行性動物の特徴です。
目力
最後に瞳の発信力とは、その奥から発せられる深淵の力である。
目と目が合うと、正確かどうかは別として、相手の気持ちが何となく伝わってくる。同時に相手にもこちらの気持ちが伝わる。
ウェスト・サイド・ストーリー。名シーンは大勢が踊っているパーティー会場で、マリアとトニーが出会った場面でした。
マリアとトニーはパーティー会場で、互いに遠くに立っていたのに、人混みをかき分けて二人の視線が出会った。許されない仲だったけれど。
リチャード・ベイマーのトニーは歌います。
マリア マリア マリアーーーー
ナタリー・ウッドのマリアが歌います。
トニー トニー トニー
何も言わなくても、瞳を通して互いに深淵な気持ちが通じ合った瞬間です。
反対に警察官の場合は、目をそらした人物は怪しいと睨んで、職務質問をすると聞いた。野生の猿は目が合うと襲ってくる。
瞳とはちっぽけな穴だけど、場合によってはどんな美辞麗句や罵倒の言葉よりも、大きな発信力をもつのです。