緑内障5:高齢者の場合
高齢者の緑内障治療
若い人は早期発見と早期治療。年をとったら生涯通院を続けて検査と目薬。緑内障の話題は紙面やネットにあふれていますが、中でも公の学会や医師会の情報が比較的公平で、よく整理をされていると思います。
ここでは、日本眼科医会のホームページを見ながら、今一度緑内障の問題点について考え直してみます。それは「緑内障といわれた方へー日常生活と心構えー」というタイトルで、以下の15項目にわたって、緑内障という病気が詳しく記されています。
1 はじめに
緑内障はとても多い病気で、日本の失明原因の第一位という件から始まります。一旦驚いた後、ただし、緑内障になっても、失明をする確率はとても低いと記されいて、今度はほっとします。
以下、こんな項目が続きます。
2 自分の緑内障のタイプを知ろう
3 こんなに多い緑内障患者
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15 定期通院の検査と治療を忘れない!
緑内障という病気が丁寧に、わかりやすい言葉で記されています。しかし、これを読む側の受け取り方はいろいろ。気になるところだけが頭に残ると、とても恐ろしい内容になるかもしれません。
「緑内障はとても多い病気」
「日本の失明原因第一位」
「緑内障は後戻りをしない」
「一生通院と治療が必要」
これを額面通りに受け取ってしまったら、絶望感を抱くのは当たり前。極端に緑内障を恐れる人は、だいたいこんな読み方をしているのではないかと思います。
多くの場合、それほど恐れることもないので、冷静に見た内容が「緑内障3:失明の不安」に記してあります。よかったらご覧ください。
検査と生活
また、平易な文章なので、さらりと読み過ごしてしまう部分があって、例えば以下の内容です。
「視野検査のこつ」
「日常生活は普通に!」
視野検査をやったことのある方はお分かりと思いますが、とても集中力が必要で、体調が万全でない時など結構つらい検査です。コツよりなにより大事なのは元気で集中力をたもてること。二日酔いや寝不足はいけません。
日常生活は普通に、といわれてもその日常生活が車いすのような生活だったら、あるいは癌の治療中だったら。後期高齢者にとって視野検査はかなり負担になるか、あるいはそもそも正確な検査ができないこともある。
生涯通院
「生涯通院の心構え」
「定期通院の検査と治療を忘れない!」
一口に生涯と言うけれど、人生100年と言われる中で、健康寿命は70代の半ば。それを過ぎたら誰かの助けがないと通院、治療は難しい。
ところが、その助けが必要な後期高齢者の人口は1700万人。
うち一人暮らしは500万人。
中でも寝たきりの人は300万人。
認知症600万人。
医師会は生涯通院の主張をするけれど、こんな高齢者にとって、それはとても無理な話。何かの急性疾患や、事故で亡くなれば別だけど。
当然、目薬だけを欲しがる人が出てくるけれど、そこには医師法というものがあって、無診療治療は禁じられる。
やむを得ない事情があれば、例外的に薬だけでも認められるけれど、例外はいつまで、あるいは何回まで認められるのか。そうかといって往診をしたところで、視野検査のような緑内障の評価はできない。なんともしようがないのです。
先日は脳梗塞による入院生活を終えて、ようやく退院をしたところ、自宅で転んで2度も骨折をしたという方のお話を聞きました。
こういう方たちのための医療体制も法整備もできていないのが現実。それでも許される範囲で、最もよいと思われる方法を考えるのが現状です。こんな対処をしながら、何十年も治療を続けた患者さんが亡くなったことがわかると、これまでご家族から最後の暮らしぶりを伺ってきました。
すると、光もわからないような完全な失明にいたった方はたった一人だけ。急性の緑内障発作で、どうしても手術が必要なときに、心筋梗塞を発症して、そちらの治療を優先せざるを得なかった方だけでした。