院外茶話
    痛かった日曜日

    目から火が出た 小学校に上がってすぐか、その前か覚えていない。庭を走っていて、飛び石につまずいた。一瞬、自分が転ぶということがわかって、今からぶつかる石が目の前に迫ってくる光景は、はっきり覚えている。 その後、我が家でど […]

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    院外茶話
    戦場のセレナーデ

    高齢の緑内障 Kさんがやってきた時は、すでに80歳になっていた。緑内障を患ってから何十年にもなるのだろう。すでに末期の状態で、日々の生活にも不便をしたに違いない。それでもしっかりした足取りで、診察室に入ってきた。ただし、 […]

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    院外茶話
    海水浴三世代

    千本松原 ようやく25メートルのプールを泳げるようになった頃、沼津に住む叔母を訪ねて、連れて行ってもらったのが千本松原の海水浴場。きれいな海だったけど、海岸はごつごつした丸石で、砂浜のような遊びはできない。それに焼けた丸 […]

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    こころの生い立ち
    こころの15:モリー画伯

    オランウータンの趣味 オランウータンのモリーは上野動物園で、ずいぶん長生きをした。すでに片目は失明していたけれど、晩年は絵を描く楽しみを覚えて、画用紙を相手に時を過ごしていた。飼育員にクレヨンをもらって、描いた作品は80 […]

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    自由が丘の眼からうろこ
    自由が丘・昭和から令和へ

    銀座・広小路 繁華街といえば銀座、上野広小路。日本中にある地名で、もちろん自由が丘にも広小路通り、自由が丘銀座があった。昭和30年代、我が家の前はつばき通りと呼ばれていた。同じ通りにある大島屋という料亭が繁盛していた頃で […]

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    院外茶話
    私はウソを申しません

    豆腐は豆腐屋で 小学校に入ったころは広尾に住んでいた。今でこそ高級住宅街だけど、当時は空地がいっぱい。防空壕で遊んでいた。冷蔵庫がなかったので、生鮮品の買い置きはできず、夕方の買い物はほぼ毎日のこと。母は買い物篭をもって […]

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    自由が丘の眼からうろこ
    スーちゃんは好きですか

    Oさんの受診 Oさんはあまり身ぎれいな方ではない。たいがいは髭が伸びて、着ている服もよれよれだった。古希を迎えて身だしなみには関心が薄れてしまったかもしれない。 Oさんはメガネをはずしてシャツの裾でレンズを拭きながら、も […]

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    院外茶話
    余生の終わり

    長寿 義父は瀬戸内海の小さな島で生まれた。能美島という。お寺の九男坊で、実家の寺は長男が跡を継いだ。他の兄弟もたいがい仏門に入ったけど、義父は医師の道を選んだ。 当初、広島市民病院に勤務をしており、たまたま原爆が投下され […]

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    院外茶話
    余生の始め

    引退 義父が尾道を出立したのは、翌9日のことである。小さな鞄一つで我が家にやってきた。「いつまでおるかわからん。おいてもらえる間はおるで」来るとは聞いてはいたが、どうやって迎えればよいか、考えてもいなかった。とにかく以前 […]

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    こころの生い立ち
    こころの14:ダーウィンが行った

    進化論 ダーウィンが進化論を唱えたのは1859年。種の起源という。当然、万物は神様が作ったとするキリスト教にとっては不都合な内容で、ずいぶんと反撃を受けたけど、裁判にまではいたらなかった。 もし、進化論の内容について公の […]

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    院外茶話
    温泉癒し旅1:陽だまりのバス停

    沢渡温泉  毎日同じような暮らしをしていると、無性に旅がしたくなる。そんな時にはなるべく自然の豊かな温泉場を探す。ただし、いつ気が向くかわからないので、直前になって人気の宿を予約するのは難しい。そこで狙うのは、比較的小さ […]

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    院外茶話
    老いの達人

    出立 義父は皮膚科の医師である。長年尾道で開業医をしていたが、80を越えて今年はやめる、来年はやめると言いながら数年が経ち、5月8日、半世紀の間続けた医院を閉じた。最後の診察日には3人の患者が訪れた。 義父が尾道を出立し […]

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    院外茶話
    最高の余暇

    今日は明日のために 働きすぎと言われていた日本人のなかでも、最も忙しい日々を送るのは多分30代。30代の人たちを中心に、日本人が思い通りにもてないのが余暇。その少ない余暇を、人々はどう過ごしているのだろう。 天気がよい日 […]

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    こころの生い立ち
    こころの13:心の土台

    知能の進化 道具、火、芸術あるいは言葉、宗教など。 これが人と動物の違いと言われたけど、猿は石の斧を使うし、ウグイスは必要以上にきれいな歌声を聞かせてくれる。道具も音楽も人間の専売特許ではない。 特に群れを作る高等動物に […]

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    こころの生い立ち
    こころの12:心の誕生

    脳の誕生 地球上に現れた最初の生物はシアノバクテリアで、それは40億年も前の話。ただ、この単細胞の生物も突然現れたわけではなく、もとは糖やリン酸を含む小さな分子であった。これが連なって大きな遺伝子となって、この遺伝子を膜 […]

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    こころの生い立ち
    こころの11:心のルーツ

    進化と心 カッコウはホオジロやオナガなど、他の鳥の巣に卵を産んで、孵った後の子育てもまかせきり。こんな具合だからカッコウは、一生自分の親に会うことはない。そのカッコウの雛は成長をすると、また別の鳥の巣に卵を産む。親に教わ […]

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    院外茶話
    緑内障5:高齢者の場合

    高齢者の緑内障治療 若い人は早期発見と早期治療。年をとったら生涯通院を続けて検査と目薬。緑内障の話題は紙面やネットにあふれていますが、中でも公の学会や医師会の情報が比較的公平で、よく整理をされていると思います。ここでは、 […]

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    こころの生い立ち
    こころの10:心の芽生え

    生殖細胞と体細胞 赤ちゃんの誕生は卵子と精子が合体するところから始まります。この受精卵は分裂を始めて1個の細胞が2個、2個が4個、4個が8個と、猛烈な勢いで増えていきますが、どれも同じような細胞ばかり。一つ一つの細胞が将 […]

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    院外茶話
    仮屋村の和尚さん

    仮屋のお寺 源頼光が大江山に住む大蛇を退治に行く途中、若狭に仮の陣屋を設けて3年間滞在した。その地を仮屋村と言う。妊婦が出産のときに一時的に籠ったり、あるいは不浄とされた月経の数日間、籠ったところを仮屋村という。何が本当 […]

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    院外茶話
    仮屋村のふみちゃん

    熊川から 京は遠ても十八里。小浜でとれた新鮮な鯖は傷まないように、ひと手間かけてから若狭街道を通って京都に運んでいた。 途中必ず通るのが熊川の宿場町で、その熊川が最も発展したのは江戸の初期。魚に限らず米や豆や様々な物資を […]

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